疾病理解教育の授業
昨今、青少年のこころの健康が注目されることが多い。しかし、保健体育等の授業で精神疾患が扱われることは少ない。その問題意識のもと、NPO法人企業教育研究会、製薬会社の日本イーライリリー株式会社、専門医らの団体である「精神障害へのアンチスティグマ研究会」、そして患者や家族の方々が協働して、疾病理解教育の授業を開発し、千葉県立関宿高校2年生で試行的に実践された。
患者への「共感」から「理解」へ
授業は、中学生・高校生対象の2時間構成で、精神疾患の中でも統合失調症について焦点をあてている。
統合失調症は、10代後半から発症することがあり、100人に1人は生涯のうちどこかでかかる病気とされているにもかかわらず、一般の人がほとんど知識をもたない状況にある。具体的な患者さんが幼少期から体験した経緯をたどることによって患者さんへの共感を喚起し、専門医の話をまじえて理解を深めてもらう。
見えないはずのものが見えたり、誰かが自分に対して批判をしているように思えたりし、自分の身体が落ち着かなくなる。これらの症状自体が大変つらい上に、その後の自分の生活に大きな不安を抱く。患者さんのインタビュー・ビデオや手記から、こうしたことを中高生に読み取ってもらうのだ。早期の発見と治療が、症状の回復にとって重要であることも合わせて理解するようになっている。
また、生活のしにくさを抱えながらも、回復後、仕事を通じて段階的に社会参加していける施設の紹介やそこに参加している患者さんと施設のスタッフのインタビュー・ビデオから、病気を抱える人にもそうでない人にも生きやすい社会のあり方について考えてもらうように説明が行われた。
このパイロット授業を経て、授業用の教材映像DVDや指導マニュアルがまとめられる予定である。