プロのダンサーによる「ダンスで、理科を学ぼう」
11月4日から6日までの3日間、京都市立南大内小学校6年生を対象に、NPO法人子どもとアーティストの出会い(理事長:井手上春香)が企画する授業「ダンスで、理科を学ぼう2009」が行われた。単元は「血液のじゅんかん」。プロのダンサーである北村成美さんが講師として授業を担当した。普段の授業ではイメージしづらい血液の流れについて、自分たちの身体で実感することが目的だ。
「血が通う」ってどういうこと?
授業は、緊張している子どもたちの身体をほぐすところから始まった。北村さんは多くを語らず、背筋を伸ばしたり縮めたり、床を手で打ち鳴らしたりといった動きを繰り返す。子どもたちは、始めのうちは意図が分からず、戸惑っている様子であったが、そのうちに北村さんに集中し、動きを真似するようになった。すると、北村さんは身体を大きく使い、時には体育館中を走り回る。子どもたちも自然とそれに従い、身体を目一杯に使い出す。人の身体の動きに集中することが、この授業のポイントである。
次に、北村さんは子どもの手をとりながら、ゆるやかな動きをしてみせた。すると、北村さんの動きに従って、自然と子どもの身体が動き出す。これが、この授業における血が通っている状態である。自分の心臓から、つないでいる手を伝い、相手側に血が流れてゆくことをイメージしながら、身体を動かす。相手とつながることができていれば、不思議にも自ずと動きが連動してゆくようになる。こうした身体の使い方についての指導は、プロのダンサーならでは。始めのうちは、なかなか血が通っている状態を実感できなかった子どもたちだが、練習を重ねるうちに、「血が通うって感覚が分かった気がした」と発言する子が増えていった。
最後日には、子どもたちの動きをつなげて、血が通ってゆく様子をダンスで再現した。普段の授業で客観的に学んだ血液の流れを、今度は「身をもって」再現したことにより、実感を伴いながら理解を深められたようだ。
身体性を伴った教科学習
こうした取り組みは、一見斬新なものに見える。しかし、何かになったつもりで考えたり、身体を動かしながら何かを覚えたりすることは、私たちが日常生活で自然に行っている。身体性を伴った学習は、人間にとって馴染みやすい学習方法のひとつだ。
子どもたちと一緒に授業に参加した担任の先生は、「他の単元や教科でも、今回のように身体に置き換えて学べるのでは」と感想を語った。今後、さまざまな場面で、身体性を伴った学習という観点から授業が工夫されることを期待したい。