練馬区「アニメ産業と教育の連携事業」
2010年12月、『練馬のアニメに生きる人たち』と題した講演会が練馬区立光が丘第四中学校で開催された。
ゲストは山口康男さん。練馬区内の東映アニメーション株式会社で、数多くのアニメに演出や企画プロデューサーとして携わり、退職後は日本動画協会の事務局長などを歴任した「練馬のアニメに生きた」仕事人だ。
アニメの演出家として
講演は株式会社ソシオエンジン・アソシエイツの小野打恵さんを聴き手に、対談形式で進行。最初に自己紹介が行われた後、山口さんが演出として携わった作品の一つとして1968年に放送された「ゲゲゲの鬼太郎」第1話の一部を視聴。参加した中学生も40年以上前に制作された映像を興味深く見ていた。
その後、オープニング曲の歌詞を初めて見た時の感想や、演出する上で作者の水木しげる先生と意見を交わした内容など、アニメ制作の舞台裏が紹介された。
また、プロデューサーとして制作に携わった「メイプルタウン物語」については、スポンサー企業や制作スタッフ、会社内の人たちとのやり取りを紹介。作品を俯瞰して見る目線を持つことの大事さが強調された。
練馬から世界へ
アニメができるまでの工程を映像で確認した後、テーマは山口さん自身が仕事をしてきた歴史に移る。
過去の東映アニメーション(元・東映動画)の建物や、昔の作業風景の写真を紹介しながら、当時の練馬区内の様子も紹介。「東洋のディズニー」を目指した歴史が解説された。
最後に「世界から見た日本のアニメ産業」をテーマに、山口さんがベネズエラやカザフスタン、中国などの海外で「アニメの伝道師」として活躍している様子を、現地の写真を交えて紹介。「大使館が現地の人に茶の湯や生け花などの日本固有の文化を紹介するのに加えて、日本のアニメについて紹介してほしいというリクエストがあった。
いつも会場は超満員で、アニメがこんなにも愛されているとは思っていなかった」と山口さんは語る。日本のアニメが世界中の人との合言葉になることに、参加した中学生も驚いていた。
「テレビCMの9割にその技術が使われているように、アニメの訴求力は強い。制作する仕事に就いたら面白い作品を作ってほしい。観る時には、のめりこまずに引いた視点で見てほしい」というメッセージが送られて、約90分の講演会は終了した。
「アニメのまち 練馬区」として
練馬区では平成21年度から「アニメ産業と教育の連携事業」の検討を行っている。練馬区内のアニメ関連の企業やクリエイター、NPOなどが意見を出し合い、小学校や中学校でアニメを活用した授業などのプログラムを企画。
平成23年度からの本格実施を目指し、今年度は小学校でもクリエイターの指導を受けてアニメづくりを行う実験的な授業を予定している。
国際的評価の高いアニメ産業が集積するまち、練馬区。アニメを通じて想像力や創造力、表現力を養い、地域に対する誇りや愛着心をもつようになることが期待されている。